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井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 感想とか 覚書とか

井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)

 

作家、井上ひさし氏が岩手県関市で行った文章講座をまとめた本です。

内容は、タイトルの通り「作文の書き方」。

段落の分け方から接続詞の選び方まで、

基本文章ルールをわかりやすく井上氏が解説してくれます。

 

今まではなんとなく文章の書き方解説本を避けていた私は、

この本を読んで、そのことをとても反省しました。

 

日本語、奥深かい…!

 

最低限の文章ルールを疎かにしていたということは、

最低限のマナーすら守っていなかったということでした。

 

特に印象に残った言葉は、本書で井上氏が一番初めに述べている箇所です。

 

自分にしかわからない経験を

誰にでもわかる言葉で書いてください。

 

 

この単純なことがどれほど難しいか。

ついつい、文章を書いていると自分で気持ちがよくなってしまって

(これもすごく大事なことではあるけれど)

わかりにくい言葉を使ってしまいがちです。

 

どこかで、

「良い文章とは小学生でも理解できる文章です」

というのを聞いたことがあります。

決して、読者を子ども扱いするということではなく、

単純な言葉で、易しく語りかけようという主張なのでしょう。

 

細かい描写には難しい語彙が不可欠だと思いがちですが、

美しい景色が、難しい言葉でしか描写できないとしたら

銀河鉄道の夜』や『てぶくろをかいに』の児童文学が

あんなに美しいはずがありませんものね。

大事なのは、言語センスやこめている心情のほうなのです。

 

ちょっと熱くなりました。

自分よがりな文にならないようにしつつ、

本の解説に戻りますね。

 

本書の後半には、井上氏の作文教室に参加した

生徒さん方の作文が数点収録されております。

テーマは「今自分が一番こまっていること」。

提出された作文には井上氏の添削が入っています。

 

これが本当にレベルが高く素晴らしい!

 

およそ原稿用紙1枚分の作文ですから、400字程度の作品群です。

そのひとつひとつに筆者のお人柄が見え、とても個性的。

人には人の文章があるのだと思い知らされます。

 

井上氏の解説はもちろん、

この作文が与えてくれる知恵はすさまじいものです。

文体ひとつ、伝え方ひとつですね。

うるっとくる作品もちらほら

くすりとくる作品もそこここに

 

どうぞ一読の価値はある本ですとおすすめいたします。